年々夏の気温が上がる一方となっています。残暑厳しい八月は盆略点前や色紙箱などを使って、炭をあまりおこさずに瓶掛で手軽にお茶を楽しみます。
これは色紙箱と言われるもので、中にはお茶を点てるのに必要なものが収まっています。気候が良くなってきたら花野にでも出かけて、ポットとこの色紙箱で気軽に野点を楽しみたいものです。
暑さはなかなか衰えそうにありませんが、それでもお盆を過ぎるころからオニヤンマが現れ、夕風がふいたり虫の音が聞こえ始めたりと小さな秋が感じられるようになります。
残暑の厳しい中、朝顔は早朝から花弁をいっぱいに広げて明るく咲く初秋の花とされています。千利休と豊臣秀吉との逸話は数々ありますが、中でも「一輪の朝顔」は有名なところです。秀吉公は、利休の庭の朝顔が大変見事だという評判を聞き、早速朝の茶会に出かけました。ところがその庭には全く花が見当たりません。秀吉は落胆して茶室にに入ったところ、色鮮やかな朝顔の一輪だけが床の間に飾られていました。目が覚めるような演出に秀吉をはじめ共の人たちもいたく感動されたそうです。朝顔を第一の趣向とする茶会ならば、庭にたくさん咲いている朝顔を取り払ってでも茶席の一輪に思いを込めるという利休の優れた美意識を感じさせる逸話です。その後、露地には花を植えないようになったとされています。この話にあやかって茶席の花を一層客に楽しんでいただくための心配りということです。
ちなみに、小座敷の花の入れ方について利休は次のように語っています。「小間の茶席の花は、必ず一種類を一枝か二枝くらい軽く入れてあるのが良いであろう。無論花によってはたっぷりと入れるのもよいが『小間の茶では華やかさだけを好んで花を入れてはいけない』。しかし、四畳半にもなれば、花によっては二種類入れるのもよかろう」と。
これは今年わが家に咲いた絞り柄の朝顔です。この頃は品種改良が進んで様々な色や柄の朝顔を楽しむことができます。中には「オーシャンブルー」と名前のあるようなお洒落な色もあります。ただ、蔓のものを床の花入れに入れるのはいつも苦労します。これも慣れが必要なのでしょうね。釣舟の花入れに涼しげに上手く入れられるようになりたいものです。
(釣舟とは…竹筒を横にして上に花窓を開けて、先端を斜めに切り落として船に見立てた竹花入れで、床の天井から吊り下げて用います。)
勢いあまって、ハンギングのポールにまで登ってしまいました。