気まぐれオルフェといなかの茶人
季節のこと、田舎の暮らし、お茶のこと
お茶のこと

九月のお茶 花と星空

八月のお盆を過ぎたころから夕刻には心地よい風が吹くようになってきます。厳しい残暑の中でも野原では時をえて秋の草花が可憐に咲き始めます。

現代の秋の代表的な花の一つにコスモスがあります。最近ではお米を作らなくなった田んぼ一面にコスモスを咲かせて、楽しませるところが増えてきました。もともとはメキシコ原産の花で、ヨーロッパで品種改良され明治時代に日本入ってきたものです。何処にでも場所を選ばず群れて咲き、風に揺れる軽やかな姿は日本人の好みに良く合っており、身近な秋の花として広く親しまれています。コスモスを茶室の花として入れられているのをまだ見たことはありません。茶花は和花や山野草などを入れますが、そういいながらも品種改良されたものが多くあります。あまり難しく考えずに、暮らしの中で身近な花をめでながらお茶をいただきたいものと思います。コスモス野での野点など楽しそうですね。

 

お稽古場では、古来より秋の花の代表格のひとつになっている菊が描かれた九谷焼の道具で楽しみました。錦繡の秋、といわれるように秋が深まるにつれ野山はいっそう華やいできます。お点前も晴れやかな気分ですすみます。

花のはなしを続けてきましたが、秋は空も澄み渡り清々しくなってきます。夏の力強い入道雲にかわり、刷毛をひいたような絹雲や何処までも続くいわし雲など秋の空は表情豊かです。

これは秋の夜空を愛でたもの。

仙人の碁盤からばや星の宿

長生庵の兼中斎宗匠の俳句で、「仙人は碁を一手打つのに何万年と時間をかけるそうだが、この星の美しい夜にその碁盤をかりて永遠の時を過ごしたいものだ」という意味だそうです。季語はありませんが、秋の季感が十分感じられますね。夜空の星の一つ一つが仙人の置いた碁石のようにも受けとられ、何ともスケールの大きな句です。

いつもながら、存分に季節を楽しむことは、お茶の大きな喜びと思っています。

暮らしの中にお茶の心を…。